除夜の円坐

人が母語を習得する際、自分が中心であった状態から、
お母さんだったり、兄弟姉妹だったり、おばちゃんだったり、大切な他者だったり、
誰かとの関係を自分自身のことばで語り、考え、ゆっくり話すようになると、
外の世界の音と同じ様に他者の声として自分の声が聞えるようになり、
同時に他者の声が聞こえるようになります(相聞)。

このようにして自分の声と他者の声が聞こえるようになると、
他者が立ちあらはれ、常に自分が新しくうまれ続けるようになります。
そこで他者と関わるために外に向けられた言葉を用い、
自己との関係にもことばが用いられます。

これは、話し始めた自分の声を自分で聴くというような、一方向の構造ではありません。
他者に語る言葉によって自己の思いを他者に伝え、自己に語ることばによって
自己の思いが立ちあらはれますが、人間は、このようにして、
自己に対し内語ということばで考え、同時に、言葉で他者に語り、他者とともに、
居ながらにして、自己を存在させうることができるようになるのだと思います。

これは、母語に限らず、第二、第三の言語も同じだと思います。
日本は単一言語のため、外国語と言われている言語がそれにあたります。

このように、あらためて言葉について、なぜ考えているのかと言いますと、
11月10日 日曜日に開催しました「Chivalry Ain’t Dead ~Enza Kagemai Front Line~」で
アメリカ出身のマニーやルーマニア出身のマリー、そして日本に生まれ
いまも日本に住んでいる日本人の方々と円坐影舞をしたからです。

山下薫さんが初めての影舞で緊張されている女性と影舞をされました。
その影舞の舞台を見ていた日本人のコリンちゃんが円坐でふと
「よっしーを思い出しました」と言いました。
彼が亡くなったことを知らなかったコリンちゃんは、
そのあとの円坐のやりとりで「会いたかった」と不意に涙になりました。

わたしは、その瞬間、直感的にマリーに影舞の手合わせを申し込みました。
マニーが英語でマリーに翻訳し丁寧に説明してくださりマリーは影舞の申し出を快諾してくださいました。
コリンちゃんとよっしーのための縁坐舞台です。

舞台の設えとして背景の壁面に仏像二体が置かれ、蝋燭に火が灯りました。
マリーとわたしはまず背景に向かってお辞儀をし、
そして向かいあってお辞儀をしました。

マリーと指先がふれるかふれないかのそのあわいの空間に、
内なることばが、ふれあい始める感覚が生じました。
その、初めてふれるマリーとわたしの指先の空間は、
この母語を習得する際の世界に通ずると感じました。

わたしたちの影舞の舞台のあと
「ありがとうございます。いろんなこと思い出しました」と、
コリンちゃんがよっしーを語り始めました。
そのとき本当によっしーがすぐそばにいるようでした。
よっしーの面影が大阪へ会いに来てくれたように感じました。

これはイタコや巫女さんが執り行う儀礼とは質を異にするもので、
リアルを追求するものでもなくて、どこまでも無縫というか、
コリンちゃんの悲しみを癒したり特定のニーズに応えたりぜずに、
ただ懸命に相手にふれ続けていることであらはれる質の空間です。

「Chivalry Ain’t Dead ~Enza Kagemai Front Line~」では
有無ノ一坐とともに守人をつとめたマニーと、
来年の二月から半年間の新たな未二観クラスもスタートします。
そのプレ開催として新年明けの1月5日 日曜日の午後、
外国語もまじえて国や言語の壁を越えた世界未二観を開催いたします。

そんなマニーと影舞いしたり、未二観もしたりして、
歩いたことのある大阪の町で「除夜の円坐」を開催いたします。

昨年と一昨年はわたしの住む高槻市芥川の老舗旅館で開催しましたが、
今年は、有無ノ一坐のふるさとでもある大阪の町を舞台に、
少人数での二泊三日の「除夜の円坐」を開催することになりました。

下町の小さな民家を拠点に、ディープな桃谷の町に坐まふ(いまさふ)円坐です。
コリアタウンのキムチ屋さんでチャンジャや豚足を買ったり、
近くのスーパーに買い出しに行ってお家で鶏の水炊きをしたり、
みんなで自炊しながらの合宿です。近くの銭湯(極楽温泉)にも行きたいな。

円坐の最終日は、大晦日です。一年のさいごを円坐で迎えたいとおもいます。
今年も残すところ1ヶ月半となりました。
それでは、除夜の円坐にて心よりご縁をお待ちしております。

有無ノ一坐 松岡弘子

< 除夜の円坐 2024 >

開催日程:2024年 12月29日10時 ~ 12月31日16時頃
円坐守人:橋本久仁彦 松岡弘子 橋本仁美
集合解散:JR桃谷駅
円坐参会費:45,000円
宿泊費用:16,000~24,000円(参加人数により変動)
食事代など実費:別途定員:3名(残席2名)
宿泊場所:大阪市生野区 桃谷の民家
最低催行人数:2人(12/20 ㈮ 申込〆切となります)
申込soumon.enza@gmail.com

 松岡主催:有無ノ一坐 https://umunoichiza.link/