フリンジ・サイエンス(境界科学)としての円坐学

娘の橋本仁美から、円坐の置かれている社会状況と重なるところがある、と勧められて、アニメの『チ。-地球の運動について-』を観ている。
なるほど、我々円坐守人には、
「生身の人間が全体としてかかわりあう円坐の磁場の中では、時空間が曲線として知覚される」
という体験としての「観測事実」があるが、それは既成の常識的な概念では証明できない。
現在、世界的に通用している「直線時間の因果論」に基づく心理学や人間関係のノウハウを、人々が固く信じて疑わない「天動説」に例えるなら、円坐の世界観は天動説と真っ向から対立する「地動説」にあたるということだな、と興味深く観ていたところ、今日また娘がある動画を見せてくれた。
イギリスの生物学者ルパート・シェルドレイクが「TED」(専門家や著名人による世界的なプレゼンテーションの場)で講演をしている動画だが、TEDの主催者はなぜかこの記録をアーカイブから削除したという。
シェルドレイクは僕にとってなじみが深い人物だ。
かつて大学の学生相談室の心理カウンセラーとして、ドイツで生まれた家族療法「ファミリー・コンステレーション」を学んでいた時に、創始者のバート・へリンガーから彼の名前を聞いて興味を持ち、その思考態度を辿ったことがある。
シェルドレイクの「形態形成場」理論は、フリンジ・サイエンス(境界科学)として主流派から白眼視されているが、その形態共鳴(モルフィック・レゾナンス)の概念は、円坐の現場を知る者にとっては明白な事実であり、真理であると言える。
シェルドレイクが報告した事例の中に、今も時々僕の中によみがえるエピソードがある。
第二次大戦中のあるイギリス空軍の飛行場では、戦闘機パイロットである主人が任務から帰還する正確な時間に迎えに来る犬が評判だった。
主人の飛行機のエンジン音でそれと知るのか、遠い空に主人の搭乗する機が現れる前に必ず飛行場に来ていて、しっぽを振って喜びをあらわにする。
しかし戦況が悪化し、無事に帰還する飛行機の数が減っていった。
ある出撃のとき、帰還した飛行隊の中に主人の機はなかった。
数時間たっても飛行場の真ん中で遠い空をじっと見つめて坐ったままの犬の姿は、機が墜落したことを疑わない人々の涙を誘った。
ところが突然犬がしっぽを振り始める。
空は澄み切って遠くまで機影はなく、音もしない。
いぶかる周囲の人々が犬と遠い空を交互に見ていると、やがてかすかに不調のエンジン音を響かせながら視界に現れたのは主人の乗る飛行機であった。
円坐のかかわりあいにも、時空を飛び超えて相手の存在にふれるリアルな感覚がある。
そのリアルな感覚が重なり、経験知となって、「曲線(球体)の時空間」や「立ち上がる面影」「言葉を辿って現場に戻る」「直線時間と物質的因果論に基づくすべてのメソッドやスキル、ワークからの離脱」など、円坐の中で自然に起こり続ける「かかわりあい」の構造や態度的条件が明らかになってきた。
かかわりあった相手との精神的、霊的な「もうひとつの空間」が成立する円坐守人の実存的、態度的条件の必然性は、現在信じられている物質科学や、既存の心理学の概念では断片的な把握しかできず、合理的に説明できない。
だが、シェルドレイクの形態共鳴理論なら「円坐学」の序章にテキストとして用いることができる。
シェルドレイクの変わらない尖った生きざまと、鋭さを増した科学的思考にふれて、円坐守人として生きる僕は大いに鼓舞され、うれしかった。
今月22日から始まる「生駒石切400時間円坐2026」は、現代社会で信じられている「直線時間の因果論」に基づく「成育歴」「トラウマ」など、過去の情報や固定概念を重視してかかわりあう通常のグループアプローチとは、まったく位相が異なっている。
先日、世界中を旅しているハンガリー人の言語研究者に、円坐の位相と磁場を説明した時には、「グループ」という言葉が持つ西洋的なニュアンスと区別して、日本語の「寄合YORIAI」という言葉を用いた。
「生駒石切400時間円坐2026」は、この世界にたったひとりしかいない実存的な人間同士として、「通常の意識の境界を超えてゆくかかわりあいを生きる稽古」である。
現代人の特徴になったアルゴリズム思考によって個性が均質化され、無意識的に体制順応に向かう人生態度と、常に新鮮な未知の世界へ向かい続ける「意識的な生死の態度」の境界に成立する新世代の科学「フリンジ・サイエンス」は、日常生活の真ん中に無作為に置かれる有無ノ一坐の「境界の円坐」と互いに共振している。
もし我々が現在よりも高い位相の視点から、時間を超えてトータルに観測することができるなら、円坐における「生身の人間どうしの、瞬間で世界に広がるかかわりあい」を理論化することができるだろう。
「生身の人間どうしの、瞬間のうちに全世界と響きあうかかわりあい」の理論は、我々現代人が断片的で熱量の低い人間関係の状態に平均化され、管理されている現状を正確に認識することから始まる。
既成の知識や情報を集めたAI的な論理やストーリーではなく、生身と生身の対峙と仕合からしか生まれないリアルな生命感に満ちた思考態度によって、我々の意識は、人間同士が真実の姿でかかわりあう霊性の領域をとらえ始める。
現代という時代状況を生きる我々は、他のどの時代よりも「人間同士の真実の姿のかかわりあい」を必要としている。
少人数で一年間一緒に坐る「有無ノ一坐の生駒石切400時間円坐」は、物質的な「自他の区別」という公式や、「固定した自己概念」という幻の前提にとらわれた心理学を越えて自由に、生身でかかわりあうことができる機会である。
個人主義的態度に閉じこもって、生涯を自分の好き嫌いの感情に終始して終わるのではなく、今は目に見えなくても、未来に咲き誇る人間同士の真実のかかわりあいという霊的な花を直観して、生駒石切400日間円坐に坐ろうとする方々にお伝えしたい。
生駒石切400日間円坐の円坐衆は、同じく通年で前日の土曜日夜に開催される「未二関稽古」への全参加費を無料とする。
「来世」ではなくこのたびの人生で、「世界と他者」とのかかわりあいに身を投じ、未二の関所を超えてゆく、人間の意志の高まりを願う新しい日本の芸能「円坐影舞未二観(関)」の、さらなる稽古の機会としたい。
「意識的に生死の境界を越えてゆく人間の意志」とは、自他や家族や民族の境界を超えてかかわりあう、実践的で霊的な人間の生きざまのことである。
今週11日には福岡県福津市の株式会社「暮らしの問屋 畦道」での社内円坐が実施される。
社長の古橋範朗氏が「津屋崎円坐」に参加されて、その必要性を直観し、継続的な社内研修円坐としての導入を決め、今年で二年目となる。
同じく15日には博多で、「人と組織の成長を支援する〜株式会社ヒューマナイズ」が主催する「はかた円坐~縁起をまとう」が開催される。こちらもすでに第18回を数えて、社長の吉次潤氏はもはや我々の人生にとって欠かせぬ人である。
6月14日には熊本の「フレンズネットワーク」の主催で『きくみるはなすかかわりあう』と題した講演と円坐を行う。
ネットワークの石井嘉寿絵氏は、初めて熊本に僕を呼んでくださった方で、彼女に会うのはもう四回目となる。
9月の連休には台湾の国立中央大学と台北大学でも有無ノ一坐の講演と円坐影舞を予定している。
この出来事は、香川県三豊市の秋山英俊氏が、徳島市の「円坐影舞阿波のうた」に来坐されたことによって生じた。
先週の3月4日は、前衆議院議員の辻英之氏のご実家を訪ねて福井県小浜市に向かい、氏の選挙活動の姿勢と円坐の共通点について語り合った。
今回は自民党の前に敗れたが、辻さんが小さな集落の一人ひとりを訪ねて結んだ絆は今も健在で、周辺地域の票数は減っていないとのこと。
小さな集落の古老が「選挙前に来るならわかるが、選挙後になんでこんな村に来る?」といぶかったそうだが、氏のかかわりあいの姿勢は、我々の円坐の姿勢と相通ずるところがあった。
築120年の辻さんのご実家を使わせていただいて、「若狭の国小浜ふるさと円坐街道」を開催する予定である。
今年は「有無ノ一坐の世界円坐」開始の年である。
我々は、かかわりあいになった外国の人たちや、円坐の時空に関心を持つ会社や団体のスタッフとも円坐の「一坐建立」を行う。
「ミニカウンセリング」から発展した「未二(全体)を観ずる」未二観は、美しい心象風景を見せてくれるがまだ静的である。
「円坐」という生身の人間とのかかわりあいを継続して体験を重ね、存在の位相が深まるとき、「旅人」は「未二観」を後にして未二の関所を越え、動的で世界的な「未二関、未二の関わりあい」の領域に参入する。
そして、他者と自分自身の「生きざま、死にざま」が、ひとつになって響き合う新たな位相の現実世界を感受し、リアルでダイナミックなかかわりあいの態度が、我々の人生全体に広がってゆく。
人生全体に広がったかかわりあいの態度から、「影舞」という舞台芸能が生まれた。
初めて会ったふたりの指先と指先の間に一瞬で、時間を超えて成立する実存的なかかわりあいは、この一度きりの現実世界で生きるお互いの生きざまを如実に映し出す、対峙と仕合の即興舞踊になる。
影舞は、舞う二人の指先の小さな空間に生きた円坐が宿り、言葉の意味にとらわれることのない「動きの世界」でスリリングに展開する霊的な対峙と仕合が立ち上がる。
これが円坐・影舞・未ニ観(関)の三位一体、すなわち「円影未二」の口承即興芸能である。
円坐については、有無ノ一坐サイトの「有無ノ一坐の生駒石切400時間円坐」の案内記事に、松岡弘子、橋本仁美、橋本悠、橋本久仁彦が、円坐守人としての独自の思考内容を掲げている。
「円坐を本気で好き(橋本悠)」な彼らの、唯一無二の思考態度を参照されたい。
★ルパート・シェルドレイクの講演はこちらからどうぞ(外部サイトへとびます)

