冬の妙高8日間 寒立の円坐2021 〜守人 橋本久仁彦〜

12月に妙高高原で8日間に渡る円坐舞台を行います。
円坐も影舞も未二観も、きくみるはなす縁坐舞台も、この世で最も不思議な存在である「他者」にふれようとする試みです。

「他者の存在」と、他者が存在するがゆえに初めて体験できる「人にふれる」という秘蹟。
自分ではない「他なるもの」に「ふれ」一瞬で「あい」になる人生の不思議。
それは我々人間、すなわち「人の間にある者」の生死の迷いと悩みを生み出し、やがて越えて行く唯一の道。
「わたし」がこの世に生まれて以来ずっと目の前にある公然の秘密 「あなたという他者」。

先日の出稽古の折、岐阜県瑞浪市の釜戸と呼ばれる山あいの町にいました。
釜戸とは高熱で土を焼き美しい陶器を生み出す「かまど」のことです。
瑞浪市は古来より陶器の町として栄えてきました。

円坐にも「関係性のかまど」と言いうる境域があります。
他者と真摯に対峙することで発生する磁力は透明な光度と熱量を持ち、
その中で初めて話すことと聞くことがひとつになるような「状況」が生まれます。
話したことはすでに聞こえていたこと。聞いたことはすでに話していたこと。
我々は日常の、常識的な時空間を越えてゆく道中を旅する道連れ同士であったことを思い出し始めます。

円坐という何もない舞台の上に辿り着いたのは、もともと我々が「出逢っていた」からでした。
「他者」とはこの世を超越したものの面影であると思います。

★★★

「現在」とは時代の変わる時我々の魂をあたため 精神を明るくする同伴者がいる。
坐衆とともに坐るひそかな面影。
人間関係の廃墟の中に埋められた円坐守人と言う礎石は破壊のかまどの中から結晶する新たな陶器たちの熱き舞台となる。
はなすことときくことがひとつになった炎の言葉は文字になって「談」。
光と熱に貫かれて脈打つ我らの心魂が「円坐舞台」となり、言葉はいにしえの命を得て「きくみるはなす縁坐舞台」に立ち上がる。
略して「きみは舞台」すなわち「あなたがわたしの生きる舞台」。
「わたし」とは「あなた」という全世界とふれあうよろこびで生きる生き物。

仮象としての思考を ことばを この肉体と血液と呼吸のすべてで辿れ 深く 深く。。
そして宇宙の「ことば」 森羅万象の「こえ」に辿り着け。

冬の妙高8日間 寒立の円坐2021 舞台守人  橋本久仁彦

 世界が一変した2020年に旗揚げし、師走の新潟・妙高高原で初開催した円坐合宿「冬の妙高8日間 寒立(かんだち)の円坐」。本年もおなじ時分、おなじ場所で、ふたたび場を開くこととなりました。守人は前回同様、大阪より有無の一坐 坐長の橋本久仁彦さんをお迎えします。 

 豪雪に見舞われた昨冬の妙高。あれから季節は移ろい、梅雨前線におおわれた日本列島は湿度を上げながら炎夏へと時を進めています。が、“過去のこと”であるはずの妙高での円坐の記憶が色褪せたかといえばそんなことはなく、むしろ微細なことほどより鮮明に、今ここで直面しているかのようなリアルさでよみがえってくるから不思議です。

 静かに熱を帯びつつ展開する円坐の渦中、それらすべての場面を共に過ごした人たちの、笑い、泣き、黙し、震え、喜び、うちひしがれる姿のひとつひとつ。それらは“過去の姿”であるはずなのに、実はいつだって、あの場を生きたわたしたちに会いに行くことができる。なぜなら、あのとき間違いなく、わたしたちはわたしたちのまま、それぞれにもがきながら、共に懸命に8日間の円坐という不確かな場に身を投じて生きたから。どんなかたちであれ、わたしたちはあのとき“関係”しあったからこそ、そこに“わたしたちの時間”という関係性が生じたといえます。


 「“現在”もなければ、“過去”も“未来”もない。あるのはただ観測されたときに決まる事象どうしの関係だけ。時間とは関係性のネットワークである」これは近年の物理学界で注目を浴びるループ量子重力論の本質だそうですが(物理学者カルロ・ロヴェッリ著『時間は存在しない』に詳しい)本合宿の守人、橋本久仁彦さんもかねてからこんなふうに円坐を表されています。

『きくみるはなす円(縁)坐舞台はいつでも純粋即興の構えで始まりますので固定的な説明概念は少ししかありません。しかしその精神性を敢えて概念化するために近似の理論を探すと、アインシュタインの相対性原理が思い浮かびます。相対性原理の「不確実性」の概念は円坐の展開理論として考えてもよく合います。「すべては関係の中にのみ存在する」という相対性の原理も円坐や影舞、未二観の説明に用いることができます。しかしこの道行きを本当に、全身と全霊で歩くならば、円坐相聞の道は不確実性では終わりません』

 円坐道中を全身全霊で歩むことで、不確実性の先にどんな景色が見えるのか。この世には、リアルにこの身を投じることでしか見えてこない世界があります。

よろしければ続きはぜひ、妙高で。
ご縁あるみなさま、今年もまた、どうぞ混乱の世を生き抜かれ、師走の妙高でお目にかかりましょう。

「妙高 寒立の円坐」
呼び掛け人 菅野美和(Ajanta)

昨年12月にひらかれた新潟県妙高での長期円坐が今年も開催される運びとなりました。
私は前回参加者として参加しました。今回は、主催として先頭を走る菅野美和さんの“殿(しんがり)”をつとめます。

菅野美和さんの姉御肌で義理人情に厚いところ、わが身を顧みず相手にむかって筋を通してゆく姿を昨年の8日間で目の当たりにし、尊敬しています。私も寒立の円坐の名前に恥じないよう臨みます。

8日間の円坐は日常の意識では長く感じますが、飛び込んでしまえばとても短く、そして何年と感じられるほど濃く生きられてゆきます。日常のなかで、相手の言葉を自己都合で持ち替えずに最後までそのまま聞き届ける人は、まだ世間ずれしていない小さな子どもや、命の終わりを見据えた方々をのぞいて、この世(現代社会)にはほぼいません。

円坐守人に結界され、他者からのまなざしによって発生する円坐(舞台)という特殊な空間は「わたしの言葉」が他者に包み隠さずほんとうに聞かれる場として機能し、そこでは今まで他者から聞かれてこなかった「わたし」がはじめて表にあらわれることができますが、この世を渡るうえで隠し通せていた「わたし」が白日のもとへさらされてしまう恐ろしい所でもあります。

しかし私にとってもっと恐ろしいのは、この現代で病的に肥大してしまった自我によって心に「わたし」しかいなくなり、他者が私のなかに存在できなくなることです。そうなったときに私に残るのは、万能感と、虚ろな孤独なのではないでしょうか。

自分ではもはや壊せない自我で身動きがとれなくなったとき、頼りになるのは目の前に迫る他者のまなざしと言葉です。他者のまなざしを頼りに、言葉を命綱にして、見えない歩みを進めて8日後に辿り着くのはどんな景色でしょうか。

ご一緒できるご縁を心よりお待ちしております。

「妙高 寒立の円坐」
助っ人(しんがり)橋本仁美

【冬の妙高8日間 寒立(かんだち)の円坐2021〜守人 橋本久仁彦〜】概要

◆開催日程: 2021年12月11日(土)〜12月18日(土)7泊8日
◆開催場所: 上信越国立公園 妙高高原(新潟県妙高市)
◆合宿先:妙高高原 池の平温泉 パークロッヂ関根
http://sekine.tv/annai.html
(宿に関するお問い合わせは本主催者にお願いします。
直接宿へのご連絡はお控えください)

◆募集定員:10名
ご参加表明やお問い合わせなどはメールにてご一報ください。
miwa.sugano39@gmail.com(菅野美和)

◆守人:橋本久仁彦氏プロフィール◆
1958年大阪市生まれ。大学卒業後は高校教師となり、アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱したパーソン・センタード・アプローチに基づく「教えない授業」を10年間実践する。その後アメリカやインドを遊学し、人間同士の情緒的なつながりや一体感とともに発展する有機的な組織作りと、エネルギーの枯渇しない自発的で創造的なコミュニティの建設に関心を持ち続けている。1990年より龍谷大学学生相談室カウンセラー。様々な集団を対象とした非構成的エンカウンターグループを行う。

2001年12月に龍谷大学を退職、プレイバックシアタープロデュースを立ち上げ、プレイバックシアター、エンカウンターグループ(円坐)、サイコドラマ、ファミリー・コンステレーション、コンテンポラリーダンスなどフィールド(舞台)に生じる磁場を用いた欧米のアプローチの研究と実践を積み重ねるも、10年間の活動を終え、その看板を下ろす。

生涯を通じて手掛けてきたミニカウンセリングは位相を進めて「未二観」となり、エンカウンターグループは「円坐」となり、縁坐舞台も「縁起の坐舞台」と成って様式が整い、生死・顕幽の境を超えて不生不滅の景色を展望する三つの終の仕事となった。仲間も変遷し、この頃は生死を共にする有縁の仲間(一味)と地方へ出稽古に出ることが楽しみ。毎日がこの世の名残りの道行である。

高野山大学スピリチュアルケアコース講師。
円坐守人。影舞人。口承即興〜円坐影舞「有無の一坐」坐長。

◆円坐とは◆
円坐とは、円坐守人の呼び掛けの言葉に呼応して、定められた場所と刻限に寄り合った坐衆(参加者)が、ただ円に坐り、成り行き(道往き)を共にすることです。円坐守人は、円坐の呼び掛け人であり、円坐の坐衆の一人でもあります。

円坐守人の役目は、円坐の場所と刻限の決定(結界)を尊重し、「円坐」という出来事(アラハレ)に目を見張り、話し手の言葉(事の端)に耳を澄ませ、円坐守人として自らに約束した「聞く」という道を果敢に辿り、刻限まで坐衆と共に生き抜くことです。


INTERVIEW 僕ができてきた場所 橋本久仁彦さん

寒立の円坐守人 橋本久仁彦の
インタビュー記事〈15分間のミニカウンセリング(未二観)形式〉をご覧いただけます。上記タイトルよりどうぞご覧ください。

※主催者・菅野美和さんのブログ
耳を澄ますとき だれかとの時間、こころに染み入る ことばの記録。へリンクしています。