神楽月 相聞茶堂



先日、
相聞茶堂にお越し下さった方の、
生まれ故郷の土地を訪ねました。

お母様のご実家である神社では、
未二観をさせていただきました。

この神社の由緒書きには、
1197年前に宮司の始祖であり、
加賀国の修験道者である方が、
諸国山岳を巡りながら、
この山上景勝の地を斎場と定めて、
白山権現を創建しました、とありました。

彼女のご先祖様が代々守ってこられた、
山と神社です。

ご実家のお兄様が材木屋を継がれ
境内の檜を枝打ちし伐採した材で、
拝殿の床をしつらえ、
日頃先代の宮司さんが乾拭されて、
とても白白とした輝きを放ってて、
檜の香りが本殿に満ちていました。


境内の彼方此方に箒が立て掛けてあり、
今にも動き出しそうな佇まいでしたが、
この箒の主は神社の元宮司さんであり、
彼女の叔父様のものでありました。


未二観をしていたら、すごいタイミングで、
目があまり視えてらっしゃらないそうですが、
足裏の感覚と長年の勘で山を登って来られ、
我々のために本殿の灯りを点けてくださり、
拝殿の床を拭いて、掃除をされていました。


未二観が終わると、
神社の中を案内してくださり、
奥の本殿まで見せてくださいました。


沢山お話を聞かせてくださり、
彼女も初めて知る事はがりの様子で、
大変有り難き時間となりました。


神社からは東京が見事一望できました。
初めて見た東京の町を見晴らす風景は、
大阪の町より遠くて大きく感じました。


昔は、
高層の建物もなかったそうで、
新宿や東京タワーが一望できたと、
彼女のお母様が仰っておられました。

お母様の作られた、
刺身蒟蒻は絶品で、
煮物やきんぴらは、
滋味深く、
ふと、祖母の事を思い出しました。


毎月、相聞茶堂ではこの様なご縁で、
様々な土地からお越しくださいます。


今度は我々一坐が、
お越しくださった方の、
ご縁の土地に入らせていただき、
出向いて行かせていただくのは、
とても有り難い事だと思います。 

故郷がいつの間にか近くなりました。

旅の道中、
相聞茶堂にどうぞお立ち寄り下さい。
皆さまのご縁をお待ちしております。

有無の一坐 松岡弘子

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◇ 開催日時:11月18日(木) 10〜17時

◇ 茶堂場所: 石切相聞亭

◇ 円坐守人:橋本久仁彦 松岡弘子 橋本悠

◇ 内容:未二観・影舞・円坐・円坐舞台

◇ 会費:一万円

◇ 申込:soumon.enza@gmail.com 松岡

◇ ご挨拶:

相聞茶堂は、令和二年七月から三カ月間『浦堂 きらら』で、九月からは『高槻町 うらら』の古民家へ移り開催して参りました。令和三年一月より『石切 相聞亭』にて開催いたしております。

「茶堂」とは、日本の喫茶店のルーツです。四国の各地の村境にある小屋のことで、生活をする中で世代を問わず語り合ったり旅人をお接待する憩いの場であったり、四国の各所には数多く残っています。

その「茶堂」を場所としてそこから呼び覚まされる生活の言葉、智慧による願われた言葉が、我々に生まれる瞬間、生活に深く根ざした、思議することあるべからず世界へと道がひらける、そんな、ちいさなわたしを通じて、世界の歴史全体を包み込むような空間がこの世にひとつ、あればいいなあとおもいます。歴史を越える心にふれるには、人に会うことでしか始まらないと思います。

人の語る言葉をそのまま聞くということが、たとえ発語がなくとも、聞こえてくる言葉をそのまま聞くということがほとんど無くなりつつある現代だからこそ語りの言葉には他者への敬意と土地への誇りも、同時に、不可欠だと痛感しています。

わたしたちはこれまで長い歴史の中でいのちの事を生命とは呼ばず、寿命と呼んで参りました。寿というものをいただいて、命そのまま生きているわけですが、現代は個人の生命を私有化してしまい、大変苦しんでいます。寿命とは一体なんだろうかと思うのです。生活に根ざした、向こうからの呼び声のような、魂の言葉のような、寿命とはそんな願いのような気がしてなりません。

そこで「相聞茶堂」という見えない小屋の棟を上げ、その土地の舞台となり、皆様と共に、この現代でいうお接待の形を試みてみたいと思います。
同時に、この願いというものは、いつの世にも願われてきた「呼び声」でもある、という気がしています。

では、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

松岡弘子