2024年3月の有無ノ一坐円坐舞台ラインナップ

一昨日、2月29日は4年に一度の閏月で、この世に一日多くあらわれる不思議な日です。
僕は叔父の葬儀のため娘の仁美とともに堺市に出向きました。
92歳で亡くなった伯父は、8年前に亡くなった僕の母の弟です。

母は生前、自衛隊をへて自動車業界で活躍したこの弟のことを
「かっちゃんは単車から戦車まで修理できるんや。すごいんやで!」
とよく自慢していました。

1945年3月13日の深夜から朝にかけて、アメリカ空軍の爆撃機「B-29」274機が大阪の空を黒い雲のように覆い尽くし、1733トンもの焼夷弾を投下した「大阪大空襲」のとき、母は「かっちゃん」と焼野原を逃げ惑いました。

八百屋さんの前を通る時、炎に焼かれる店先にとうもろこしがくすぶっていて、かっちゃんが飛び込んで拾いに行き、二人で食べようとしたが炭になってて食べられなかった、という話を何度か聞きました。

僕は「かっちゃんのおっちゃん」が大好きでした。

甥っ子の僕に対しても友達のように対等に接してくれる大人だったからですが、一番の理由は、「かっちゃんのおっちゃん」が僕の母によく会いに来て

「姉ちゃん、姉ちゃんはどう思う?」と、

常に敬意と慈愛のまなざしを向けていたからです。

「かっちゃんのおっちゃん」はコロナ禍の最中に施設に入ることになり、ケアマネージャーが用意した車に乗る別れ際、これで最期になるのかと覚悟する我々に

「じゃいくわ!」

と、いつもと変わらない友達のような笑顔を見せたのでした。

火葬場で焼かれ砕けて小さな骨の集まりになった「かっちゃんのおっちゃん」を前にして、係の人が「これは入れ歯の金属ですね、これは骨折の時に入れた人工骨です」と説明します。

立ち会っている親族は

「・・この骨がのど仏、ほーそうですか、仏さんが坐っておられる姿ですか」と、言われるままにうなづきながら、渡された長いお箸で順番にお骨を拾います。

人々はまるで思考停止のようになって、指示されるとおりに動きます。
これは今まで何度も見た光景です。

かっちゃんのおっちゃんは骨になった。
骨になったからもう生きた人ではなくなった。
焼け残った入れ歯を残して小さな骨壺に入ってしまった。

僕は少し離れてその光景を見ながら、今までとは違った明るい印象の中にいました。
「かっちゃんのおっちゃんはカルシウムやたんぱく質の衣服を脱いで今自由になってる」

そこには長い冬のあとで初めてつくしんぼをみるような清々しい解放感がありました。
先日、津屋崎円坐に行った時に今年初めてウグイスの声を聞いた時のような喜びの空間です。

これは縁坐舞台や影舞の舞台空間の感覚です。

円坐街道でたった1日の旅を終えただけなのに長い月日が過ぎ去ったように感じる時空越えの感覚です。
未二観の8分間や15分間に人生が丸ごと入ってしまうあの拡張感覚です。

円坐、影舞、未二観の空間と同じように「かっちゃんのおっちゃん」のお骨上げの空間も明るく広がって「生きて」いました。

今、僕が未二観を開くならば「かっちゃんのおっちゃん」は8分間の時空の中で「姉ちゃん」に会っているでしょう。

今、僕が円坐に坐るならば、8年前に亡くなった僕の母が満面の笑みを浮かべて「かっちゃん」と一緒に坐っているでしょう。

今、僕が影舞を舞うならば、声なき声が指先を導いて時間と空間を「運び」、「指先の先」にかっちゃんのおっちゃんと母の物語が見えるでしょう。

きくみるはなす縁坐舞台とは、8年前に87歳で亡くなった僕の母が、79年前、1945年の16歳の「姉ちゃん」として、
92歳で亡くなった「かっちゃんのおっちゃん」を13歳の「かっちゃん」として、
2024年の2月29日に笑顔で迎えに来ているという「現実の舞台」のことです。

有無ノ一坐は、時空や生死を貫いて変わらない人間関係の真実が、当たり前の生活事実として知覚され認識される社会を開くために、舞台芸能という表現形式を用いて仕事をしています。

これらの知覚や認識は、人間関係を一般化して効率的、方法論的に理解しようとする態度からは生じることができません。

これらの感覚は人間関係という「人生の必然」に誠実に対峙し、仕合い、個人的、全面的に生き切る態度の中で、一生の時間が経過するうちに自然に芽生えて来る人間本来の身体感覚です。

この自然な身体感覚と、他者と対峙し、仕合って生き切る態度は、「方法論の物質化」である生命を持たない人工知能の計算が作り出す人間関係とは決定的に異なるものです。

なぜならそれは我々人間が「死んで往く」という大きな特徴を持つ生命存在であるからです。
「死んで往く」という働きを持つゆえにコピーできず、独自のひとり一人として時空を超えて存在しているからです。

我々は必ず死んで往く存在であり、だからこそ独自のひとり一人でいられます。

その事実を基盤として関わり合う他者との真剣な人間関係と、そこに生まれる身体感覚は、時空を越え、生死を超えて発展していきます。

円坐、影舞、未二観の中で芽生えて育つ「他者と関わる態度と身体感覚」は、「他者」と「わたしの身体感覚」というように分けて考えることができません。

この場合の「身体感覚」は「関わり」と「他者」を含んでひとつになっているからです。

この事実を端的に言葉で表現すれば

「あなたはわたしである。そしてわたしはあなたである。」

となり、個人主義に基づく現代教育を受けた我々にとっては論理的に意味が不明瞭になります。

しかしこの事実認識は、人生最期の最高度の経験である死が、
それにふさわしい体験であるためには不可欠です。

そこで有無ノ一坐では、円坐・影舞・未二観という「関わりの空間言語」を用いて現場を開いています。

関わりの空間言語とは、我々のその都度の身体と空間の有り様が、そのまま生きた言葉として体験される「円坐舞台経験」のことです。

他者との人間関係を独自の自分として生き切る態度と、
人間に関わり切る経験によって初めて生まれる生死を超えた身体感覚(関係感覚)は、

4人に1人が高齢者であり、新しく生まれてくる人よりも日々亡くなって往く人の方が多い現在の日本社会の常識として、新たに育てていかなければならない重要な感覚であると考えています。

独自の自分として他者と関わり切る人生態度は、現代の世界状況や地球の困難な現実を生き抜いて行かねばならない国民や市民としての我々にとって、そしてこれから社会に出ていく子供たちにとって必須の生活態度であると思います。

有無ノ一坐が円影未二の舞台を仕事として各地を旅し、
精神的にまったく疲れず、倦まず、新鮮な喜びが連続するのは、
以上のような理念が我々の精神的実体になっているからです。

理念とは「知識」ではなく、長年の生きる姿勢が結晶化して命ある言葉になったもので、有無ノ一坐や守人連中の精神性となってこの世界に実現しています。

そして目には見えぬたくさんの「他者」が我々を生かし、精神を引き上げてくれているという事実を
「円坐舞台守人」として日々稽古し、知覚し、認識していく現実の生活となっています。

では3月の有無ノ一坐円坐舞台ラインナップをご案内します。

円坐や円坐街道はすでに長い年月を有無ノ一坐と関わり合っている方々も同道しますが、我々はいつも尊敬しあう「他者」どうしのままです。

誰かに対してまったくの「他者」であることは、
人が人に与えることのできる最高の贈り物であると思います。

「他者」とは、いつ誰に対しても初心である人のこと。
他者として生きるすべての方々と円影未二の人生の旅をご一緒したいと思います。

有無ノ一坐は命の続く限りいつでも皆様のお越しをお待ちしています。

有無ノ一坐  橋本久仁彦

☆☆

2024年3月の有無ノ一坐円坐舞台ラインナップ

①3月2日(土)大阪市西区
「楽器の家」 

②3月3日(日)愛知県名古屋市鶴舞公園
「第6回あいち鶴舞円坐」 

③3月6日〜7日 千葉県
「道にゆきくれし円坐&エルピス」 ⇒円坐守人の仕事をしていてよかったとしみじみ思うご案内の言葉です!影舞を観ていただくことの意味を認識しました。ありがとうございました。

④3月10日(日)大阪府池田市
「学び舎円坐」 

⑤3月11日(月)大阪市西区
「シュタイナー読書とぷち実践会」 

⑥3月12日(火)26日(火)大阪市西区
「第18期影舞山月記(鬼)」⇒影舞教授初心者歓迎

日程①3月12日②26日③4月9日④23日⑤5月14日⑥28日⑦6月11日⑧25日毎火曜19時~22時過ぎ

⑦3月13日(水)〜14日(木)和歌山県
「高野山大学スピリチュアルケアコース卒業生円坐舞台」

⑧3月14日(木)大阪府高槻市
「弥生のふるさと相聞茶堂」 

⑨3月15日(金)大阪市西区
「大阪千代崎3時間円坐」 https://umunoichiza.link/2864/

⑩3月16日(土)大阪市西区
「未二観レビュアークラス第6回」 

⑪3月17日(日)東大阪市石切町
「生駒石切円坐守人十六番稽古」

⑫3月20日(水祝)大阪市西区
「どうする直子円坐」 

⑬3月22日(金)大阪市西区
「姉弟円坐」 

⑭3月22日(金)福岡県糟屋郡篠栗町
「フリースクール山ねこ結び式~影舞団「山いぬ組」卒業公演」

⑮3月23日(土)福岡県福津市津屋崎&渡
「津屋崎&渡・生活者円坐かんまちせいめい」

⑯3月24日(日)福岡県福岡市博多区
「第二回はかた縁坐舞台~縁起をまとう」

⑰3月28日(木)大阪府高槻市
「円坐いろは 聞く稽古」 https://umunoichiza.link/2674/

⑱3月29日(金)神奈川県横浜市青葉区寺家町
「森のようちえん・青空保育ぺんぺんぐさスタッフ円坐」

⑲3月30日(土)神奈川県横浜市青葉区寺家町
「寺家ふるさとのengawa円坐」

⑳3月31日(木)徳島県佐那河内村
「阿波・佐那河内ふるさと桜の円坐街道」 URL

//////////////////////////////////////////
有無ノ一坐 個人セッション
//////////////////////////////////////////

◆橋本悠の「個人セッション」https://umunoichiza.link/2703/

◆松岡弘子の未二観玉手箱 https://umunoichiza.link/1521/

◆はしもとひとみ円坐ドラム

◆橋本久仁彦の「ふたり舞台」

-------------------------------------------------------------------------
4月以降のご案内、そのほか対談記事など掲載
有無ノ一坐webサイトTopページ https://umunoichiza.link/
問い合わせ先 enzabutai@bca.bai.ne.jp(橋本久仁彦)