千葉相聞茶堂と妙有真空円坐 @鶴舞公園 名古屋公会堂
先日、冬の妙高 寒立の円坐のご案内の折に円坐の説明として「大いなる未完」という言葉を申し上げました。
僕にとって円坐の仕事は、人生を懸けるに値する生業であり、新しい芸能の体験であり、
未曽有の出来事が連続して起こるこの時代の要求に応えうる実践的な人間の生き様の提示です。
8か月の間、互いに真剣に関わり合う円坐舞台守人十六番稽古は、
円坐舞台に関心を持って来られた方々との喜怒哀楽、厳しさと楽しさ、心の琴線に触れ合う稽古の中で、今まで知らなかった新しい自己の精神性に出遭う道のりであるといえます。
この新しい精神性とは唯一無二の個人的、精神的な命のことですから、伝達継承は不可能であると思います。
しかし円坐舞台の上で、この人生を引き受けた「自分」というひとりの切実な「役者」として、
持てるすべてを投じて相手と真摯にふれあい、時にぶつかりあい、
指先のとがった先と先、苔の生えた人格の角と角が交差し、刺し違えるとき、
おのずと勝手に「円坐」という「伝達」は起こります。
身も心も精神もふたりの間に置いて共に本気になってかけがえのない「仕事」を「仕合う」とき、
すでに伝達は起こっています。
「円坐の伝達」は時間を越えたところに生じるものだからです。
これは大自然の一部として生きる我々にとって、時機を得れば必ず起こることです。
もっと楽しい人生にしたいな、とか自分を変えてみたいな、といった精神状態では難しいとしても、
時機を得た方々にとっては五歳から百歳まで年齢に関わらず誰にでも可能な大変分かりやすい道でもあります。
この道は完成や完了を目指す目的達成の道ではなく、
永遠に変わらぬ現在の我々のこの素顔のまま立ち上がる「大いなる未完の道」であるからです。
先月11月23日から三日間、有無の一坐は熊本県水俣市へ名残りの出稽古ドサ廻りの旅に出ました。
鹿児島空港に始まって、不知火海と八代湾を囲む天草半島を水俣市の対岸の御所の浦まで駆け巡る、
魂の大冒険となった出稽古ドサ廻りでした。
一坐一味として旅の道連れと成った方からご挨拶の言葉を頂きました。
「円坐」という精神的な舞台の「伝達」についてよく内実を示していると思いますので謹んで掲載させていただきます。
「くにちゃん、ありがとうございました。
御所浦を含む天草地方は波止場からも鯛が釣れる豊かな漁場でした。
御所浦(牧島を含む)の漁家では多くの家で門口や軒先に「えべっさん(恵比寿様)」を祀っていました。
11/15はえびす祭りの日。
各集落のえびす像の前で神事が行われ、全ての漁船が旗を立てて海に乗り出し、壮大なパレードを行います。
海へ感謝し、お餅やお酒を海に捧げるのです。
100槽近い船が海を大漁旗を立てて海を埋め尽くし、島中総出の賑わいだったそうです。
あのトンネルは、本当にタイムトンネルだったのですね。
有無の一坐のお仕事は、タイムトンネルを繋ぐこと とも言えるかもしれませんね。
忘れ難い旅になりました。
「完了」という言葉は、僕にとっては日常用語でごく気楽に使ってしまう、と申しましたが、
単に口癖ということではなく、僕には「きちんとやりたい」という病気があり、「完了」が好きなのだと思います。
人と人との関係も一回一回完了させておきたいのだと思います。
でも、このタイムトンネルを経験した今、僕らは倶会一処であり、完了などないのだ、と知りました。
大変なことになりました。。。。。
僕は新たな旅に踏み出したようです。
また、皆さんとご一緒したいと思います」。
「水俣出稽古に参加させていただきありがとうございました。
そして大変お世話になりました。
関ヶ原を体験し、そのことを文章にしたものをくにちゃんが十六番稽古の参加者向けにシェアしてくれた
「円坐守人がいることで、その土地そのもの、その土地の神様、そこで生きた方々、生きている方々と会うことが出来たら良い。」
が正に起きた水俣出稽古でした。
温泉神社のお世話をされている71歳の方のお話を聞けたことで、今まで以上に円坐守人というものに意義を感じています。
このような体験になったのはくにちゃん始め、有無の一坐のみなさんが長年にわたり築き上げてきたものがあるからだと思います。
そのような尊いものにご縁をいただいたことをとてもうれしく、ありがたく思います。
今年体験したことから、円坐守人とは何であるかということが全く変わりました。
一部の人たちのためのものではなく、何の制限もなく、日常に開いたもの・・・・ここから先はまだ考え中です」。
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有無の一坐の名残りの出稽古ドサ廻りは我ら一坐の余生ある限り続きます。
この生が尽きても続く旅です。
来週の有無の一坐は東に向かって名残りの円坐舞台を展開します。
関東の円坐舞台景色は「千葉相聞茶堂」
中部尾張の国の円坐舞台景色は名古屋公会堂に「妙有真空円坐」
新潟妙高山には「冬の妙高 寒立の円坐」が、それぞれ紫、緑、赤の布地に白く「円坐」を染め抜いた幟を立ち上げています。
すでに時機を得た方も、時機を得んとされる方々も、
有縁を祝賀する円坐の晴れ舞台にて、互いの生き様の、指の先と先にて宿命の影を舞わせていただきたく、ご案内申し上げます。
来年4月から始まる円坐舞台守人十六番稽古を望む道々の風景の中、我ら一坐は2021年の師走の冬の道を歩きます。
まだ見ぬ未知・満ち・道の皆様との懐かしい再会を心から楽しみにしております。
口承即興~円坐影舞 有無ノ一坐 橋本久仁彦